ピロリ菌の血清学的診断
ピロリ菌の血清学的感染診断(ピロリ菌抗体価)でとっとも広く使用されている「Eプレート」(栄研化学)の測定範囲は3.0~100 U/mlですが、ピロリ菌未感染と既感染・現感染を鑑別するためには測定下限3.0 U/mlより低濃度の分析が必要になります。そこで、栄研化学と共同で0.5~3.0 U/mlの範囲を測定するいわゆる高感度測定法を開発しました。
ピロリ菌現感染者はもちろん既感染者も生命にかかわる胃がんを発生しやすいと言われています。そこで重要となるのは、未感染と現感染および既感染との鑑別です。血液検査で未感染者を鑑別できれば、胃がんの診療や検診においてとても意義があります。当院で内視鏡を行った患者さんの感染状態と高感度測定法によるピロリ菌抗体価を分析して、未感染とその他の感染状態を高い精度で鑑別できることを発見しました。
ピロリ菌抗体価は除菌が成功すると徐々に低下します。このピロリ菌抗体価の低下現象が解明できれば、除菌治療の成否判定、除菌治療以外の要因でピロリ菌が死滅した症例(いわゆる偶然除菌例)の把握に有用です。そこで、当院で除菌治療を実施し除菌に成功した患者さんのピロリ菌抗体価を長期的推移を分析しました。
ピロリ菌抗体価の方法はELISA法で行われてきましたが、2014年に新たな検査法としてラテックス法が開発されました。ラテックス法は検査に要する時間を短縮でき、汎用性のある自動分析装置で計測できるという大きなメリットがあります。しかし、ラテックス法による抗体価が多くのデータの蓄積があるELISA法の同様に解釈できるかはわかっておりません。そこで、当クリニックで検査した患者様の同一の検体を2つの検査法で同時に測定しました。その結果、最大の特徴は、ラテックス法の陰性高値(抗体価3.0~9.9U/mL)には未感染が多く含まれており、ELISA法とは同様の使用法は適切ではないことがわかりました。
苦痛のない経鼻内視鏡テクニックの開発
当院では苦痛のない上部内視鏡検査(胃カメラ)を実現するため、2003年4月に経鼻内視鏡を導入しました。これは経鼻内視鏡の生みの親である宮脇哲丸先生(出雲中央クリニック)に次いで日本で2番目の導入です。
最善の経鼻内視鏡を普及するため前処置法、内視鏡システム、観察法などを研究してきました。その成果を関連学会および講演会などで積極的に発表し、2008年に医学書院から経鼻内視鏡の医師向けのマニュアル本「患者にやさしい経鼻内視鏡ハンドブック」を出版しました。現在、最善のテクニックを紹介する医師向けサイト「経鼻内視鏡のテクニック」を立ち上げて苦痛のない経鼻内視鏡の普及に努めています。
経鼻内視鏡で使用する備品の開発および販売
最善の鼻腔麻酔法「スティック法」で使用する鼻腔麻酔用スティックを開発しました。2006年FTS社(現在、富士フイルム社に吸収)とともに塩化ビニル製の前処置スティックを開発し発売しました。現在でもこの塩化ビニル製ディスポ―ザブルスティックは日本で年間200万本程度使用されいます。
2017年塩ビスティックをさらに高性能にしたシリコン製鼻腔麻酔スティック「DPスティック」を開発し豊栄社から発売しました。
経鼻内視鏡では外鼻孔をスコープで圧迫するため外鼻孔周囲の痛みが発生することがあります。そこで、外鼻孔を保護するシリコン製鼻孔キャップ「ノーズピース」を開発しました。